戦後日本のアバンギャルドに関する展覧会×2

Two exhibitions regarding Japanese postwar avant-garde

現在、戦後日本の前衛芸術を前衛書運動から牽引した宇野雪村、具体美術協会の中心メンバーとして牽引した白髪一雄の展覧会が開催中です。

私は普段からいろいろな人に書の話をします。特にアートが好きな人は、書の芸術的要素に興味を持ってくれるので、話して楽しいです。

もう何年か前のことです。ある人と初めて話した時、「例えば前衛書というものがあって」と切り出したところ、「それは過去の話ですか? 今の話? 今“前衛”とわざわざ付けるのは何故ですか、アートはすべて前衛であることが前提ですが」、とバッサリと斬られてしまいました。それで、書においては前衛は未だに異端だし、伝統であることが前提だという話になりました。

一方、ある版画家の方は、「新しいことが良いことなのか自分は疑問に思っている。むしろ古いものの中に新しさがあるのではないか」とおっしゃいました。ただ、彼がやっている版画は巨大なインスタレーションで、版画の伝統を新しい解釈で捉えたものだとのこと。どの領域でも同じような葛藤があるのだと知りました。

ある画家とは、“自己表現”についての議論になりました。「一般的に、書道教室で自己表現を教えるところは皆無」と話すと、彼女の話をしてくれました。昨今の美大では真逆で、油絵科であっても、教授から「自己表現を」と指導され、静物画や風景画よりも抽象表現やパフォーマンスが評価される風潮があるそうです。彼女はそんな軽薄な“自己表現”の偏重を笑い、その美大を中退したとのこと。 

最近知り合ったアーティストは、「自己表現とは何か、それを考えることが芸術のスタート地点」とおっしゃいました。私の好きなあるアーティストは、「自分の作品はすべて自己表現。俺にしかできないことだけをやっている」と言い切ります。でも別のお気に入りのアーティストは、「自分から表現したくて作ったものはない、すべて依頼があったから作っただけ」と告白するのです。

まとめようとして書いているのではなく、結論はありません。正解がないのがアート。この多様性を好きなのですし、この今の状況そのものがアートというふうにも思えます。

さて、前置きが長くなりましたが、現在、戦後日本の前衛芸術を前衛書運動から牽引した宇野雪村、具体美術協会の中心メンバーとして牽引した白髪一雄の展覧会が開催中です。どちらも見応えがありすばらしかったので、おすすめします。ぜひご覧ください。



宇野雪村展 (東京画廊+BTAP)


ギャラリーサイトより引用 「戦後の前衛書運動を牽引した宇野雪村は1912年、兵庫県生まれ。1932年に御影師範学校(神戸)に卒業し、書道誌『書鑑』の購読をきっかけに書を志しました。1932年ごろより上田桑鳩の指導を仰ぎ、1940年、桑鳩を代表とする芸術研究団体・奎星会の結成に参加。戦中・戦後を通して前衛書運動の発展に尽力しました。この度、ご遺族の協力を得て、東京画廊での展覧会が実現します。

雪村は、書の原点である古代中国の文化を熱心に研究し、収集した拓本の一部は没後、北京の故宮博物院に寄贈されました。中国文明に対する思慕は雪村の書にもうかがわれ、その多彩な前衛的表現は、いずれも、書の古典に基づいた展開として読み解くことが可能です。

雪村が牽引した戦後の前衛書は、文字の意味内容から脱却しようとします。例えば雪村の作品にはタイトルがローマ字で示されているものがありますが、これは同音異字の多い日本語の漢字音をローマ字で示すことによって敢えて曖昧さを生み、表象と意味との対応関係を緩めようとしたものでしょう。造形性を純化させてゆく前衛書は、こうして絵画へと接近していきますが、その一方で書の表現の基本をなす身体性は保持されました。そしてこの身体性こそ、抽象表現主義や具象絵画など、前衛芸術との共通項となります。雪村は西洋の美術家とも盛んに交流し、その活動は書の領域を超えたアートシーンに様々な影響を残しました。

東京画廊+BTAPは70年の歴史のなかで、「摩崖碑拓本展」(1977年)をはじめ、数々の書に関する展覧会を行ってきました。本展開催が、前衛書への注目を高め、日本の近代美術史を再考するきっかけとなればと願っております」



会期 2020年1月11日~2月29日
会場 東京画廊+BTAP
住所 東京都中央区銀座8-10-5 第4秀和ビル7F
開館時間 11:00~19:00(土~17:00)
休館日 日、月、祝
観覧料 無料
アクセス 地下鉄銀座駅徒歩6分
URL http://www.tokyo-gallery.com



白髪一雄展 (東京オペラシティ アートギャラリー)


美術館サイトより引用 「白髪一雄は、戦後日本の前衛芸術を牽引した具体美術協会の中心メンバーとして知られ、近年改めて国際的に熱い注目を集めています。兵庫県尼崎市に生まれた白髪は、具体美術協会に参加する前年の1954年より、床に広げた支持体に足で直接描く「フット・ペインティング」の制作を始め、その実践と探求により、未知の領域を切り拓いてゆきます。

従来は制作の手段にすぎなかった身体運動(アクション/パフォーマンス)をまさに画面の主役に据えるそのラディカルな方法は、既存の芸術的、社会的な常識を一気に飛び越え、人間がものを作る行為の原初にたち返る画期的なアイデアでした。

具体美術協会解散後も先鋭な制作原理を貫いた白髪の作品は、空間や時間、物質や運動のなかで人間存在のすべてを燃焼させる圧倒的な力をはらんでおり、同時に、絵具の滴り、滲み、粘性や流動性、堅牢さ、といった油彩画ならではの魅力を豊かに備えています。

白髪の探求は、人間の資質と感覚をいかに高めるかという問題や、宗教的な精神性の問題など、独自の人間学的アプローチを含んでおり、様々な視点からの検証を待っています。

白髪の没後10年以上を経て開催する本展は、東京で初の本格的な個展として、初期から晩年までの絵画約90点をはじめ、実験的な立体作品や伝説的パフォーマンスの映像、ドローイングや資料も加え、総数約130点で作家の活動の全容に迫ります」

会期 2020年1月11日~3月22日
会場 東京オペラシティ アートギャラリー
住所 東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間 11:00~19:00(金土~20:00)
休館日 月(祝日の場合は翌火)、2020年2月9日(全館休館日)
観覧料 一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料
アクセス 京王新線初台駅東口徒歩5分
URL http://www.operacity.jp/ag/exh229



宇野雪村「無」1959
宇野雪村「無」1959

宇野雪村「不明」1959
宇野雪村「不明」1959

宇野雪村 左2点「いのり」1958 右「すみれ」1956
宇野雪村 左2点「いのり」1958 右「すみれ」1956

宇野雪村「すみれ」1956 部分
宇野雪村「すみれ」1956 部分

白髪一雄「游墨 壱」1989
白髪一雄「游墨 壱」1989

白髪一雄「天異星赤髪鬼」1959
白髪一雄「天異星赤髪鬼」1959

白髪一雄「貫流」1973 部分
白髪一雄「貫流」1973 部分

白髪一雄「地暴星喪門神」1961
白髪一雄「地暴星喪門神」1961

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